遅の筆

 前回からだいぶ間が空いてしまった。2週間に1回くらいでがんばりたいと思っていたけどなかなかむずかしい。

 

 文章にしておきたいことならたくさんあったはず……。

 

 SFの話とか(樋口恭介『構造素子』は本当にサイコーだった。伊藤計劃長谷敏司の文脈で感想をまとめたい)。

 同人ゲーの話とか(定期的にDL siteで散財すると健康に良い)。

 桜井のりおの話とか(ゲラゲラ笑える一方で女児服へのアツいこだわりが感じられるオンリーワンの作家だ)。

 久しぶりに太宰治を読み返したらすごく良かった話とか(『畜犬談』、書き出しがマジで天才なんすよ……)。

 おすすめ人文ブック、おすすめ美少女ノベルゲの続きも書けていない。

 

 いくらでもネタはある。書いてないけど。

 社会人しながらもの書きの仕事をしている先輩が何人もいるし、時間がないというのも言い訳っぽい。

 

 遅筆で文章が下手だと自分で思う。

 いつもおっかなびっくり書いている。ためらいながら文を吐き出す。急に息切れして立ち止まる。どうにか気を入れてまた手を動かす。最後にもぞもぞと推敲する。結果たいしてうまくもない文章が完成する。時間をかけたぶんいいものができるというわけでもない。

 短い時間で何千字も書ける人はすごいと思う。早いだけでなくそれが良いものだったりするとつくづく自分の書きっぷりのひどさを痛感してしまう。仕事上、いろいろな人のいろいろな文章を読んで添削する機会が多いのだが「普段何も書かないけどどうにか一晩で終わらしたわハハハ」って感じの人の文章がたいへんエモかったりするとぼ、ぼくは……となる。

 自分の言葉のうまくなさは常々感じているけれど、書くこと自体は好きだ。オエッオエッと苦しみながらどうにか形にした自分の文章を読み返すと決して良いとは思えないがこれはこれで愛おしいと思えるときがある(うわマジでゴミだなってときもあるけど)。

 

 この前も年度末で異動してしまうサイコーの上司に手紙を書いた。

 好きなエッチ漫画家に「ここがエッチで萌え萌えで良さなんですよね……」とひたすら綴ったファンレター/怪文書を送り付けることもある。

 もちろん手書きなわけなのだけれど、yullco1は字もヘタクソである(職業的に致命傷)

 頭を抱えて下書きを作り、ヘタクソなりにどうにか整えた文字を便箋に連ねていく。

 対象の良さについてひたすら言葉を尽くす作業。

 上司にしてもエッチ漫画家にしても、自分の時間を何時間でも割いてもいいと思える誰かがいることは尊いものだと思う。

 いい話っぽくしようとしているけれど、大して相手に響かなかったり、最悪読まずに捨てられたりしている可能性だって充分ある(エッチ漫画家さんについてはyullco1のツイッターが認識されているっぽいので無事読まれているようだ。エッチ漫画家さんはサイコー)。

 

私はただ人間を愛す。私を愛す。私の愛するものを愛す。徹頭徹尾、愛す。そして、私は私自身を発見しなければならないように、私の愛するものを発見しなければならないので、私は堕ちつづけ、そして私は書き続けるであろう。神よ。わが青春を愛する心の死に至るまで衰えざらんことを。

                    (坂口安吾 『デカダン文学論』より)

 

 すごく1人よがりな作業だと思うけれど、それはそれでいいかなと思う。

 本当に良いものを目の前にして語彙力がジュッと消え去るときもあるけれど(オタクなので)、一方でそれを何とか言葉としてつかまえたい欲がある。自分の好きなものに向き合ってその何が好きなのかをどうにか言葉にしようとする時間を大切にしたい。このブログもそのための場としてほそぼそと続けていきたい。

 ぼくはぼくのためにオエーッとなりながら好きなものについての文章を書いていたいのだ(マゾいな?)。